東京地方裁判所 昭和50年(ワ)161号 判決 1981年7月20日
原告
タツミ技研株式会社
被告
大阪瓦斯株式会社
他3名
右当事者間の昭和50年(ワ)第161号実用新案権侵害行為差止等請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第1当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
1(1) 被告大阪瓦斯株式会社は、別紙第2、第3目録記載の
(2) 被告東邦瓦斯株式会社は、別紙第4、第5目録記載の
(3) 被告株式会社柳澤製作所は、別紙第2、第3目録記載の
(4) 被告株式会社パロマは、別紙第4目録記載の各物品の製造販売をしてはならない。
2 原告に対し、
(1) 被告大阪瓦斯株式会社は、金1億591万5,300円
(2) 被告東邦瓦斯株式会社は、金2,295万円
(3) 被告株式会社柳澤製作所は、金2億4,280万円
(4) 被告株式会社パロマは、金四億4,010万円
及び右各金員に対する昭和50年2月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払をせよ。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決及び仮執行の宣言。
2 請求の要旨に対する答弁
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
との判決
第2当事者の主張
1 請求の原因
1 原告は、左記のとおり実用新案登録出願をなしその登録を受けた(以下、右登録にかかる実用新案権を本件実用新案権という。)
記
名称 炊飯器における釜の支承装置
出願日 昭和40年4月15日
公告日 昭和43年1月26日
登録日 昭和43年9月25日
登録番号 第854757号
実用新案登録請求の範囲
別紙第1目録記載のとおり
2 本件実用新案権の考案の構成要件を分説すれば次のとおりである。
(イ) 金属帯状薄板より形成した彎曲片の両端を枠体の内側壁上部数個所に固定すること
(ロ) 該彎曲片に釜主体の上縁部を嵌合載置すること
(ハ) 炊飯器に於ける釜の支承装置であること
3 被告大阪瓦斯株式会社(以下、被告大阪瓦斯という。)は、昭和43年1月26日以降昭和48年12月末日までの間に、次に記載する型式のガス炊飯器を合計105万9,153台以上製造して販売し、現在もその製造販売を続けていて、今後ともこれを継続するおそれがある。
(1) 11―016(0.7立)型
(2) 11―017(1立)型
(3) 11―020(1.4立)型
(4) 11―036(2立)型
(5) 11―038(2立)型
4 被告東邦瓦斯株式会社(以下、被告東邦瓦斯という。)は、昭和43年1月27日以降昭和48年12月末日までの間に、次に記載する型式のガス炊飯器を合計22万9,500台以上製造して販売し、現在もその製造販売を続けていて、今後ともこれを継続するおそれがある。
(1) PAM―5F(1立)型
(2) PAMF―5F(1立)型
(3) PA―5F(1立)型
(4) PAF―5F(1立)型
(5) PAM―7F(1.5立)型
(6) PAMF―7F(1.5立)型
(7) PA―7A(1.5立)型
(8) PAF―7F(1.5立)型
(9) PAM―10F(2立)型
(10) PAMF―10F(2立)型
(11) PA―10F(2立)型
(12) PAF―10F(2立)型
(13) RA―10B(2立)型
5 被告株式会社柳澤製作所(以下、被告柳澤という。)は、昭和43年1月27日以降昭和48年12月末日までの間に、次に記載する型式のガス炊飯器を合計242万8,000台以上製造して販売し、現在もその製造販売を続けていて、今後ともこれを継続するおそれがある。
(1) グローリー(0.7立)型
(2) グローリー(1立)型
(3) グローリー(1.4立)型
(4) グローリー(2立)型
(5) 11―016(0.7立)型
(6) 11―017(1立)型
(7) 11―020(1.4立)型
(8) 11―036(2立)型
(9) 11―038(2立)型
6 被告株式会社パロマ(以下、被告パロマという。)は、昭和45年1月27日以降昭和48年12月末日までの間に、次に記載する型式のガス炊飯器を合計440万1,000台以上製造して販売し、現在もその製造販売を続けていて、今後ともこれを継続するおそれがある。
(1) PR―1K(1立)型
(2) PR―1KF(1立)型
(3) PR―1M(1立)型
(4) PR―1MF(1立)型
(5) PR―1.5K(1.5立)型
(6) PR―1.5KF(1.5立)型
(7) PR―2C(2立)型
(8) PR―2K(2立)型
(9) PR―2KF(2立)型
(10) PAM―5F(1立)型
(11) PAMF―5F(1立)型
(12) PA―5F(1立)型
(13) PAF―5F(1立)型
(14) PAM―7F(1.5立)型
(15) PAMF―7F(1.5立)型
(16) PA―7F(1.5立)型
(17) PAF―7F(1.5立)型
(18) PAM―10F(2立)型
(19) PAMF―10F(2立)型
(20) PA―10F(2立)型
(21) PAF―10F(2立)型
7 右3記載の被告大阪瓦斯の製造販売にかかるガス炊飯器のうち、(1)は別紙第2目録記載の、(2)ないし(5)は同第3目録記載の(なお、図面については、(2)は別紙第2図面、(3)は同第3図面、(4)は同第4図画、(5)は同第5図画による。)、4記載の被告東邦瓦斯の製造販売にかかるガス炊飯器のうち(1)ないし(12)は別紙第4目録記載の、(13)は同第5目録記載の、5記載の被告柳澤の製造販売にかかるガス炊飯器のうち、(1)、(5)は別紙第2目録記載の、(2)ないし(4)、(6)ないし(9)は同第3目録記載の(なお、図面については、(2)、(6)は別紙第2図面、(3)、(7)は同第3図面、(4)、(8)は同第4図面、(4)、(9)は同第5図面による。)6記載の被告パロマの製造販売にかかるガス炊飯器は全て別紙第4目録記載の各溝造の炊飯器であつて、その釜の支障装置は、いずれも
(イ)' 金属帯状薄板より形成した彎曲片(中央部を残して左右両側に折曲げ、その先端を各外方に張出した脚部分を設けた構造となつている。)の左右両端の脚部分が枠体内側壁上部数個所に左右方向に向くよう固定されており、
(ロ)' 右彎曲片に釜主体の上縁部を嵌合載置するという構造を有している。
右(イ)'(ロ)'が本件考案の(イ)(ロ)と同一であることは明らかであるから、被告らの前記各炊飯器の製造販売行為は故意又は過失により原告の本件実用新案権を侵害するものである。
8 被告らはいずれも、右の支承装置を有するガス炊飯器の製造販売により、それぞれその1台につき100円以上の利益を受け、原告は右と同額の損害を蒙つており、仮に然らずとするも本件実用新案権の権利者がその考案の実施に対し通常受けるべき金銭の額(実施料額)は、このような支承装置を有するガス炊飯器1台につき100円を下らないので、原告に対し、右侵害行為に基づく損害賠償として1台100円の割合により、
(1) 被告大阪瓦斯は、1億591万5,300円
(2) 被告東邦瓦斯は、2,295万円
(3) 被告柳澤は、2億4,280万円
(4) 被告パロマは、四億4,010万円
の各金員を支払うべき義務を負う。
9 よつて、原告は、被告らに対し、本件実用新案権に基づき、それぞれ別紙第2ないし第5目録記載の支承装置を有するガス炊飯器の製造販売行為の差止及び前項各記載の損害金並びにこれに対する不法行為の後であり訴状送達の日の翌日である昭和50年2月11日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求の原因に対する認否
1 請求の原因1について
(被告ら)認める。
2 同2について
(被告大阪瓦斯)認める。
3 同3について
(被告大阪瓦斯)(1)ないし(5)の型式番号を付したガス炊飯器を販売してきたこと及びこれらのうち(2)ないし(5)のガス炊飯器の販売を今後も継続する予定であることは認めるが、販売開始の時期及び販売個数は争う。製造についてはこれを否認する。
4 同4について
(被告東邦瓦斯)販売したことは認めるが、製造したことは否認する。(1)ないし(12)のガス炊飯器は被告パロマから、(13)のガス炊飯器は被告柳澤からそれぞれ買受けて販売したものである。
5 同6について
(被告パロマ)(7)を除いて販売したことは認める。製造したことは否認する。訴外パロマ工業株式会社から買受け、販売したものである。
6 同7、8、9について
(被告大阪瓦斯)争う。
3 抗弁(被告ら)
本件実用新案権は、特許庁により同庁昭和46年審判第7455号実用新案登録無効審判事件(請求人日立熱器具株式会社、被請求人原告)において、昭和50年6月10日、本件実用新案の登録を無効とする旨審決がなされ、この審決は、東京高等裁判所における審決取消請求事件(昭和50年(行ケ)第89号)の請求棄却の判決及び右判決に対する最高載判所における上告事件(昭和53年(行ツ)第65号)の上告棄却の判決により、昭和54年11月1日、確定した。
4 抗弁に対する認否
抗弁事実は認める。
理由
1 原告が昭和43年9月25日に本件実用新案権の設定の登録を受けたこと、特許庁昭和46年審判第7455号実用新案登録無効審判事件において、昭和50年6月10日、本件実用新案の登録を無効とする旨の審決がなされ、右審決は、東京高等裁判所における右審決取消請求事件(昭和50年(行ケ)89号)の請求棄却の判決及び右判決に対する最高裁判所における上告事件(昭和53年(行ツ)第65号)の上告棄却の判決により、昭和54年11月1日に確定したことは、当事者間に争いがない。
右事実によれば、本件実用新案権は、実用新案法第41条、特許法第125条本文の規定により、初めから存在しなかつたものとみなされるから、本件実用新案権の存在を前提とする原告の本訴請求はその余の点について判断するまでもなく理由がない。
2 よつて、原告の本訴請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第89条の規定を適用して主文のとおり判決する。
(牧野利秋 野崎悦宏 川島貴志郎)
<以下省略>